春翔〜HALCAL〜

春を翔るように、徒然なるままに表現します。

2025-07-01から1ヶ月間の記事一覧

わたしとワンコの物語

とてもとても拙い絵ですが、わたしとワンコの物語を描いてみました。 ↑ 君は散歩の途中で会うお姉さんが大好きでした。 ちゃんちゃん。\(//∇//)\

フロム•ゼロ 50

そんな後ろ姿を私は見つめていた。彼は部屋着のままだった。ティシャツから水が滴り落ちては彼の歩いている道を作る。短い髪の毛からも水が滴り落ちてティシャツを濡らしていく。線は細いが肩の張った背中が少しづつ私から遠ざかって行く。そんな後ろ姿がた…

フロム•ゼロ49

「裕也くん、可哀想」 「本当だよな、悪いことしたよ」 「うん……」 「初めはだからそんな軽い気持ちだった。軽いっていうか、計算作っていうか。でも君と生活し始めて、いつの間にか君のこと、好きになってたんだ。これはほんとだよ。裕也も懐いてるし、君、…

フロム•ゼロ 48

そこへ誰かが川の中に入ってくる音がして、すごい勢いでこっちに向かってきた。私の体がどんどん流されていくが、それに必死に追いつこうと泳いでくる。そして私の体に手を伸ばしてくる。私の体はそれでもものすごい勢いで流れていき、その誰かの手が私の体…

フロム•ゼロ 47

私には絶対に訪れないそんな日々。 私はそんなことを思いながら、いつの間にか川の淵まで来ていた。 川はそんなこと何も知らないような顔で流れていく。行き着く先は海なのか、山なのか。そして私はどこに流れ着くのか。小さい頃に流されてしまった終わりの…

フロム•ゼロ 46

それでもその冷たさが気持ちいい。 私の人生は開けていると凪には言ったけど、そんなことはないだろうと分かっている。 私は樹の身体を押したのだ。その事実だけは変わらない。 私はこれからもなるべく目立たないよう、隠れて生きて行く。万が一私のことがあ…

フロム•ゼロ 45

あんた、私の部屋に入ったことあるの?」 凪の目がぎらついた。 「昔ね、何度もあるよ。あなたの部屋から見える景色が一番いいことも知ってる」 「ふん、あんたの部屋なんか物置だもんね」 「やっぱり物置だったか……」 私はつぶやいた。 「あ?」 「誠さんに…

フロム•ゼロ 44

そう……」私は彼の横に座った。 「もし、あの患者が亡くなるようなことがあれば俺のせいかもしれない」 「まだわからないんでしょ。そんな風に考えるのは良くないわ」 「お前に何がわかるんだよ」 「そうだけど……」 「医者なんていつもギリギリで生きてるんだ…

フロム•ゼロ 43

それから何ヶ月が過ぎた。私は誠の家で同棲を始めていた。結婚はそんなに慌ててしなくてもいいのではないかという二人の思いが一致し、とりあえず同棲から始めた形になった。 スマホの目覚ましが鳴る。時刻は五時半。隣でまだ誠がイビキをかいているので、起…

フロム•ゼロ 42

これで終わるのか、と私は思った。 結局、この母親に私は殺されるのか。 一度も愛されることもなく、憎まれたままで。 憎しみの果てには何があるのだろう。こうやって憎き元凶を壊すしかないのだろうか。それでしか憎しみは終わらないのだろうか。きっとそう…

フロム•ゼロ 41

部屋の空気はゆっくりと冷えてはいるが、貴子から発せられる匂いがたまらないので、私は無言で、力任せにまた部屋の窓を開けた。 私はまた貴子の顔を見た。貴子の鼻が一瞬動いてすぐに動きをやめた。 「ということなの」私は言った。「お兄ちゃんのこと、言…

フロム•ゼロ 40

私は室外機の隅に座り、スマホで見たくもないネットを見ながら彼らを待った。できれば夕食前に来てほしい。そうじゃないとせっかく飲ませておいた薬の成分も切れてしまう。 スマホの画面が七時十五分を指した。そこで屋上のドアが開く音がした。 「来た!」…

フロム•ゼロ 39

ちらりと凪の方を伺うと、凪はキョロキョロと私の部屋を見渡して『よく、こんなごみ溜めみたいなとこ住めるね。めっちゃGとか出てきそうなんだけど」 ここで出るよというと凪はすぐさま立ち上がって部屋を出ていきそうなので、 「意外と出ないのよ。一応掃…

フロム•ゼロ 38

横田駅に急いで戻る。駅に降り立って周りをキョロキョロと見渡す。するとそこにゆっくりとタクシーが止まった。タクシーのドアがバタンと開いて凪が降りてくる。それを見ても私は凪の元に向かわなかった。知らん顔で誰かを待っている顔をして、バスの方を見…

フロム•ゼロ 37

そして、私は土曜日を待った。その間いつものように会社に行き、いつものように過ごした。持ってきていたボタンは指紋を綺麗に拭き取った。このボタンに凪の指紋が付いていないのは不自然ではないだろうか、なんとかこのボタンに凪の指紋をつけられないかと…

フロム•ゼロ 36

ボタンを手にした後、私はそっと部屋を出て、廊下を小走りで進み、階下へと降りた。まだリビングには誰かがいる気配はない。すぐに私は廊下を抜けて玄関で靴を履いた、そして玄関ドアをそっと開けて外の様子を見てみた。庭からまだ水の音がしている。私には…

フロム•ゼロ 35

「莉子……」康太が唾を飲み込んで、手のひらをグッと握りしめた。「お前は双子だったんだ」 「え?……」 「お前とそしてお兄ちゃん」 私は息を呑んだ。 「お兄ちゃんは」そこで康太が貴子の顔を見た。「死産だった」 私はそのまま康太の顔を見つめていた。 「…

フロム•ゼロ 34

窓から生暖かい風が吹いてくる。貴子のもう何日も洗っていないであろうべっとりと油を吸収し切った髪に吹きかけるが、髪の毛は微動だにしない。私はその髪の毛のひと束を手に取った、「もう何日お風呂に入ってないの? 汚いわよ」 そう言って、私は彼女の頭…

フロム•ゼロ 33

私はそんな彼の顔をじっと見た。目が歪んで見える。この人はこんな顔をして笑うんだっけ。 「でも逆にラッキーだったよ。凪ちゃんみたいなあんな若くて可愛い子が俺を好きになってくれてさ。やっぱりさ、綺麗なものに惹かれるのは人間の本能だよね。それに君…

フロム•ゼロ 32

相手は医者よ。どう? 樹さんよりずっといいでしょ? 歳はね、三十三歳」 私は立ち上がって貴子の前に行った。そして貴子のすぐ目の前で項垂れた「ママ、私だよ。分からないの?」 私は貴子の顔を見た。「私、幸せになりますね」私はそう言ってから顔を両手…

フロム•ゼロ 31

私はその日、起きてからシャワーを浴びた。私は朝風呂などしない派だが、今日はシャワーを浴びて体を綺麗に洗い流し、髪の毛を丁寧に洗った。そして洗面所で自分の髪の毛を切った。顎までのボブカットにした。ずっと長い髪だった。ずっと黒髪だった。その後…

フロム•ゼロ 30

その瞬間、不意に誠の瞳と樹の瞳が被さって見えた。 「やっぱりさ、綺麗なものに惹かれるのは人間の本能だよね。それに君が持ってるものと凪ちゃんが持ってるものは同じかなって思ったけど、全然違うんだよね」 樹の声がどこかで聞こえた気がして、私はその…

フロム•ゼロ 29

オムライスでいい?」 「うん!」裕也が言った。 それから私はキッチンを片付け、オムライスを作った。誠の分も一応作ってラップをし、冷蔵庫の中に入れた。 その間、裕也はオムライスにぱくついていた。 「美味しい?」と聞くと満面の笑顔で「美味しい」と…

フロム•ゼロ 28

裕也が食べ終えたのを確認して私たちは店を出た。 「美味しかったね」裕也が私を見て微笑んだので、私も「美味しかったね」と微笑み返した。 「それでは」私が二人の方に頭を下げた「失礼します。今日はありがとうございました」 「いえ、こちらこそ」 誠も…

フロム•ゼロ27

やがて凪は実刑判決を受けた。あのボタンは凪が彼を落とそうと押した瞬間に慌てて彼が掴んだ物だと認定された。凪達は最高裁判所まで上告し続けたが、絶対的な証拠により実刑を受けたのだった。その刑期は十五年だった。その理由として身勝手かつ残忍な犯行…

フロム•ゼロ 26

それから私は一度だけ凪に会いに行った。面会席に座って待っていると、刑務官に連れられて凪はやってきた。私の顔を見た途端、憮然とした顔で私の目の前に座った。 「なんなの? 笑いにでも来た?」 「どうしてあんなことしたの?」 「はぁ?」 「どうして樹…